…ある日、夜も明けやらぬ博麗神社。 包丁で葱を切る軽快な音が台所に木霊していた。 「ったく…なんで私が霊夢の朝食を用意しなくちゃならないんだ?」 言いつつ、魔理沙は楽しげに朝餉の準備に勤しむ。 理由はある。前日に霊夢とちょっとしたいざこざがあった。 その末の弾幕ごっこ…紙一重で負けてしまった、そのためだ。 「……もうちょっとだったかな」 それは、味噌汁の塩梅を指しているのか、昨日の弾幕ごっこを指しているのか。 結局、どちらでも大した差はない。色々口に出しつつも、魔理沙にはどれも楽しいことなのだ。 他人に出す料理…それが例え霊夢にであろうと、手は抜かないのが魔理沙流である。 「…ん、完璧。我ながら惚れ惚れするわ」 やがて二人前の朝食が出来上がる。 器に盛られた漬物と味噌汁。漬物は霧雨家秘蔵の糠床を使用している。 湯気をたてる添え物は質素にして堅実。絵に描いたような和食である。 気が付けば外は明るくなっている。今日も無事に朝が訪れたのだ。 「よ、お待ちどうさんだぜ」 「だいぶ待ったわよ。でもまぁ、だいたい美味しそうに出来てるからいいかしら」 「よく言えるもんだな…まぁ、不味いですが頂いてくださいませ、ってな」 「…ええ、喜んで召し上がるわ」 霊夢は既に何時もの巫女装束に着替えていた。 …巫女装束とは言うが、いつからかどこかおかしい気が魔理沙にはしている。 それはそれ、口に出さないのが友達だろうか…と思っているのではあるが。 「それにしても……」 霊夢が口を開く。女の子同士、食べながら会話するなどお行儀が悪い…と気にするのも野暮だ。 「魔理沙が料理持ってくるって言うのも、なんだかしっくり来る姿よね」 「…突然何を言い始めるんだ…?別に今日の料理にはアレな薬は入れてないはずなんだが」 「…今日の料理には……?まぁいいわ。ほら、魔理沙って何時もエプロンみたいのしてるじゃない」 「…あぁ、これか?まぁ、最近は何時もしてるけどな」 「見てるとなんとも、いいお嫁さんになれそうな感じがするのよ。なんとなく」 「なにいって……んぐっ…!」 突然の言葉に、飯を詰まらせる魔理沙。 慌てて味噌汁をすすり、事なきを得る…塩味を薄めに仕上げておいて正解だった。 「あら、私はパチュリーとだなんて一言も言ってないわよ?」 「私だってそんな事は聞いてない……いきなり何を言い出すんだよ、本当に……」 「なんとなく、そこまでして白黒にこだわりたいのかな、なんて思っただけよ」 「…私は別に白黒にこだわってるわけじゃないんだが……」 なんとなく話が噛み合っていない気がしたが、魔理沙は話を続ける事にした。 霊夢との会話はだいたい何時もこんな感じだ。気にはなるが気にしてはいない。 「…私は何時も魔法の実験をするんだよ。そこではいろんな薬も作る。そう言うときに便利だろ?」 「ひょっとして服が黒いのもその所為かしら」 「まぁ、これは私の嗜好もあるけどな。魔法使いってのはおおよそそんなものだぜ」 「ふぅん…そういうもの、ね……」 霊夢の脳裏には病弱ネグリジェ少女と七色魔法莫迦が去来したが、黙っておくことにした。 「……まぁ、パチュリーの場合は魔法の薬を作ったりしないからな。必要もないんだろうし」 「え?あぁ…そうね」 「アリスはアリスで魔法使いだけど、呪術的なものに凝ってる気がするしな…何考えてるやら」 ……考えを読まれたのだろうか…とも思ったが、霊夢は気にしない。 気にした所で何が変わるわけでもなし。それより問題は、眼前の魔法使いのエプロンである。 「…じゃあ、魔理沙のエプロンは汚れ物を扱うのに適してるのよね」 「おっと、そう言って片付けの役を逃れようったって、そうは問屋が卸さないぜ?」 「巫女の仕事は忙しいの。それにこの装束はそう言う仕事に向いていないわ」 「……悪いけど、明日からの朝食準備まで引き受ける気はないんだが。」 「やる気かしら?」 「やる気はないぜ?」 今日もまた、良い日であることだろう。 そんな事を思わせるかのように、博麗神社では今日も元気に弾幕が飛び交っている。 ……この小一時間の後、香霖堂には紅白の服の修繕を頼みに来た『お客様』が居たとか居ないとか。 ----------------- 何だかわかりにくい文章になっちゃいましたが、私は敢えて『服装』で魔理沙のエプロンを。 紅魔郷以降登場のエプロンですが、魔理沙の白黒の半分くらいを占める重要アイテムかと。 紅魔郷では正統派エプロン、妖々夢ではスカートの部分を覆っています。 # ……これの正式名称を知らないのですが…半分エプロン? そもそも魔理沙の服装は魔女らしく、黒のワンピースに黒いマジックハットですね。 スカートはふわっと広がった感じで。 そして下にはドロワーズ装備。こちらは白を基調としています。 そこに妖々夢や香霖堂では冬の物語なのでマフラーが加わったりしていますが…… やはり魔理沙で外せないのはこのエプロン(もどき)だと思うのです。 旧作では普通に魔女っぽい格好をしていますが、それはそれとして…… 私が魔理沙人形を作成した際にも、この部分はこだわって作る…と先に決めていました。 で、本文中にもあるとおり、魔理沙の服装はこんなイメージで。 基本的に魔理沙は黒系統の服が好き…と言う事は根底にあると思われますが、 それ以外にも一応、黒のワンピースに帽子は魔法使いとしての形を守っているんだろうか、などと。 和食が好きだったり、まさに『古風な魔女』を地で行っているのかと。 筋金入りの努力家でひねくれているとは、言い換えれば頑固者だとも考えられます。 > 今回はエプロンのようなもの着けて、魔法使いだかなんだか分からなく > なっていますね。 …と言う言葉から見ても、そんな気がしますが…… 逆にそんな魔理沙の好んで着けるエプロンなので、色々と意味がありそうな気がしてしまいます。 一つには実験着としての役割、など…… 私はレイヤーさんではありませんが、人形師(?)として皆様の考察がかなり参考になります。 逆に、作っているときにはそれなりに考えて拘って作っていたりもするのですが… それでも解釈は千差万別。幻想郷の服装は奥が深いです。 …まぁ色々と書きましたが、結局魔理沙は服装も大好きだと言うことで^^; 書いた人:KOR